2018年8月25日(土)
日本のビジネスマナーとして敬語は欠かせません。正しく敬語を使えることがビジネススキルのひとつとして採用にも影響する、そんな風潮すら事実存在しています。ですが、こうした微妙なニュアンスの違いは、表現の繊細な日本語であるからです。
しかし、外国語においてもこのような言い回しは存在しているのでしょうか。日本のような敬語でないとしても、ビジネスに臨む以上は相手へ与える印象を考えることは欠かせません。今回は海外における敬語について、特集しました。
まず結論として、日本語における敬語にあたるような丁寧表現は、英語にも存在します。いわゆる世界共通語ともいわれる言語ですから、やはりそうしたビジネスライクな会話術も実行可能なのです。世界共通語にもかかわらず、もし単純な表現しかないようであれば、コミュニケーションは世界的に薄っぺらなものとなってしまうでしょう。
しかし、「敬語」と表すのは少し間違いともいえます。敬語という言葉を分解すれば、「敬う言葉」になるでしょう。つまり、相手のことをいかに考えて話すかどうかが重要となる言葉です。相手を尊敬するか、自分が謙遜して相手を立てるか、丁寧に接して良い印象をもってもらうかなどなど、相手が主体となるのです。これは相手を重んじる日本の特徴ともいえます。
その点、英語は主となるポイントが真逆になってきます。相手ではなく、自分が主体となるのです。自分の出方を変えて、相手にどう見せるか、それこそが英語における日本語でいうところの敬語の考え方になってくるのです。明解に表すなら「丁寧表現」といった具合になるでしょう。
そうした理由から、確かに英語でも敬語のような言葉はあるものの、日本人が考える敬語とは少し異なると捉えておいてください。英語の丁寧表現を、日本語における敬語のニュアンスで使うのは、理想的といえません。自分をどのように見せたいか、またどのように見せるべきかを考えながら、使っていきましょう。
ごく単純なやりとりでも、文章を少し変えるだけで丁寧な印象になります。表現法の多さについては、やはり日本語が世界的にみても群を抜いています。そのため、話し方の使い分けは存在するものの、日本語ほどでないので比較的マスターしやすいかもしれません。
それでは、実際の具体例をいくつか紹介します。たとえば、会話における返事をするときの英語です。いわゆる「はい」という言葉を例に挙げましょう。普通に考えると、「Yes」という単語が連想されるかもしれません。もちろん、これでも正解です。
ですが英語圏における「Yes」というのは、丁寧表現にあたります。逆に日常会話などでフランクにもちいられる言葉としては、「Uh-huh」といったあいづちのような表現が該当します。
「はい」よりさらに意思を明確に伝えられる、「分かりました」という言葉も覚えておくべきでしょう。日常で使う言葉としては、「I’ve got it」を用います。しかし丁寧表現の場合は、「I understand」という言い方が適切です。職業や年齢に限らず、多くのシーンでも使われる表現ですので、知っておいて損のないフレーズでしょう。
丁寧なコミュニケーションにおいては、お礼の言葉も欠かせません。礼節を重んじる日本では特に重要視されますが、もちろん英語においても大切です。人間関係や信頼を構築する上で重要になってくるので、英語の上達を目指したい、海外赴任するといった人は、まず覚えておくべきでしょう。
まず基本の言い方としては、中学英語でもお馴染みの「No problem」が一般的です。教科書の例文や、テレビCMなどでも有名なフレーズなので、イメージしやすいのではないでしょうか。しかし丁寧表現になると、「The pleasure is mine」や「That’s my pleasure」が適しています。お礼であれば、何でも丁寧に伝わるというわけでもないのです。覚えておいてください。
最後に、何か間違ってしまった、失礼をしてしまったという場合の、謝罪の仕方も覚えておきましょう。こちらも、日本人にとってもお馴染みであろう言葉「Sorry」が基本となってくるので、ハードルは高くないかもしれません。ですがこちらは、日常的に使っている言葉となるため、真剣な謝罪には向かないといえます。丁寧な謝罪をしたいなら、「My apologies」と表現しましょう。より気持ちのこもった、真摯な謝罪として伝わるはずです。
単独で仕事をするならまだしも、海外赴任をする多くの人は組織の一員としての勤務になるのではないでしょうか。そんなときはチームプレイが重要となるため、作業を頼んだり、また頼まれたりといったやりとりも頻繁におこなわれるでしょう。ですが、頼むという行為は自分の負担を相手に任せる形となるため、添える言葉が大事になってきます。どのような依頼の言葉が理想的なのでしょうか。
まず日常会話において、何か頼み事をする場合の話し方です。基本は、「Can you」から始まるフレーズが一般的となります。ですがこれは、ビジネスシーンにおいてはあまり理想的でありません。丁寧さを意識するなら、「Can」の過去形をもちいた「Could you」から始まる頼み方をしましょう。
丁寧な言い方で過去形を使うというのは、馴染み深いかもしれません。日本語でも、「よろしいですか」を「よろしかったですか」といった風に表現することがあります。こと日本における過去形表現は、年配の人などから何かと「適切でない」と問題視されることも少なくありませんが、英語においては正しい丁寧表現となります。安心して、使用してみてください。シーンを選ばず活用できる便利なフレーズなので、知っておいて損はないでしょう。
さらに丁寧さを増したいのであれば、「I wonder if〜」や「I really appreciate if〜」が使えたりもしますが、これらの場合、「too much」いわゆるやりすぎ表現として捉えられてしまうこともあります。日本の敬語でも、丁寧過ぎると逆に不快に感じるはずです。あの感覚と一緒で、逆に失礼になってしまうこともあります。適度な距離感で丁寧さを意識してください。
丁寧表現でもそうでなくても、意思を伝えたりコミュニケーションをとること自体は可能です。にもかかわらず、さらに丁寧表現まで覚えて幅広い言い回しで会話することには、どのようなメリットがあるのでしょうか。
まずひとつめに、日本語の敬語と同様に品格を伝えることが可能となります。正しい敬語を使う人物を見て、品があるように感じたことはないでしょうか。英語の丁寧表現でも、同様の効果が期待できます。
ふたつめは、英語ならではの点として、自信を伝えられるということがポイントです。契約や商談、面接といったシーンにおいて、自分をアピールし自信を伝えることはとても大切です。まさに、海外赴任時に重宝するメリットといえるでしょう。
そして何より、心遣いを伝えられる点も外せません。日本の敬語と同じで、丁寧な表現が相手への配慮にもつながるのです。前述の通り、相手を敬うような表現とは異なるわけですが、それでも気遣いは伝わるものです。印象良く感じてもらえることでしょう。
英語をマスターするだけでも大変なのに、加えて丁寧表現まで覚えるとなれば、よりハードルは高くなる印象を持つでしょう。ですが上記の通り、丁寧表現だからこそのメリットというものが存在します。また、日本語の敬語ほど複雑でもないので、やる気を出せば、わりとスムーズに覚えられるものでもあります。ぜひ上記の基本例を参考に、覚えてみてはいかがでしょう。