2017年12月9日(土)
効果的な英語学習法として注目されている方法のひとつに「聞き流し英会話」があります。英語学習に興味のある人なら、「音声を聞き流すだけで英会話をマスターできる」といった広告などを目にした人も多いのではないでしょうか?
もしこれが本当ならば、非常に手軽な作業で英語力をつけることができるので、とても魅力的な学習方法に思えます。しかし、このような学習法が本当に効果が上がるのかは、注意して検討する必要があります。英語学習の専門家やTOEICの高スコア保持者、英検の上級者などの間では、「聞き流し英会話」に対する懐疑的な意見も多いので、良い点と悪い点をふまえつつ、より効果的な勉強の仕方を模索してみましょう。
「聞き流し英会話」を実践した人の中には、「効果を実感できなかった」「英語テストのスコアが上がらなかった」といった声も少なくありません。これはなぜなのでしょうか?
確かに毎日シャワーを浴びるように英会話を聞いていれば、次第に耳が慣れて何となく内容をつかむことができます。ただし、こうした英会話の聞き方では、いつまでたっても細かな部分までしっかりと聞き取れるようにはなりません。
人間の脳は「音」と「文字」が一致したときに、初めてその内容を理解できるようになっていますから、文字が連想できない会話は、単なる音としての認識にとどまってしまうのです。例えば、全く予備知識のない言語、たとえばアラビア語やロシア語の映画を字幕なしで観ているシーンを想像してください。文法や単語をほとんど知らない言語をひたすら聞き取っても、それは単なる音声でしかありません。
会話を聞き取るには自分の知っている「文章や単語」と、聞こえてくる「音声」の一致が必要だということです。
また、仮に英会話を正確に聞き取れたとしても、実際に「話す」ときには、瞬時に使いたい英語を頭の中で構成する能力が必要となります。これは、「聞き流し英会話」では身に付かず、短いフレーズをすぐに英語文に変換するといったトレーニングを必要とします。したがって、英会話の力を総合的に磨いていくためには「聞き流す」だけでは不十分となる要素が多いということになるでしょう。
では、「聞き流し英会話」は全く効果がないのかというと、そうではありません。効果の出る条件をしっかり満たして学習すれば、英会話力アップの大きな助けとなります。
まず、「聞き流し英会話」のような学習法は、英語学習においては「多聴」と呼ばれています。この「多聴」は、ある程度の文法力や単語力が身についた、どちらかというと上級者にとって効果的な方法とされています。耳に流れてくる英文の文法構造や単語を理解していれば、多くの英会話を聞き取る効果的な練習となるからです。
したがって、まだ英語力に自信のないという人で「聞き流し英会話」を利用する場合は、教材として自分の実力で理解できるレベルの英会話を選ぶことが重要になります。また、その際にはスクリプトがしっかり用意され、解説内容が充実している教材を選ぶことが大切です。
「聞き流し英会話」で効果的に学習するには、自分の理解できるレベルの英語を、しっかり聞き取るという作業が大切だとわかったところで、実際にどのような手順で学習すべきかという点について説明します。
まず、英語力に自信のない人は背伸びをせず、自分の力で十分理解できるレベルの素材を選びましょう。最初は長さが30秒程度の会話がおすすめです。1分以上になると、分量が多くなり内容が複雑化していくので、英会話上級者でなければなかなか追いつけない場合が多くなります。
学習の手順は次のようになります。最初に英会話を聞き取り、スクリプトがあればそれを見ながら聞き取りにくい部分、よく理解できない部分をそれぞれチェックしていきます。
チェック部分は解説や辞書、参考書などで調べて、不確実な部分を解決しておきましょう。スクリプト上で理解できるようになったら、それを見ながら50回から100回ほど繰り返して見ます。
これだけ繰り返すと頭の中で英会話を理解できるようになりますので、今度はスクリプトを見ずに英会話を聞き流しましょう。最初の頃が嘘のように、英会話の内容がすっと頭の中に入ってくるはずです。
この聞き流す作業を数十回繰り返し、内容を完璧にとらえることができたら、次の例題に挑戦していきましょう。基本的に、英会話の聞き取り能力を上げる方法はこの繰り返しです。英検やTOEICの勉強でも、基本的にはこの方法でリスニング能力を身につけることになります。
「聞き流し英会話」によって鍛えられるのは、あくまで「リスニング力」です。実際の英会話で重要な「スピーキング」の能力を上げるには、これとは別の方法による訓練が必要です。
多くの英会話を聞き取れる力がつけば、英語を理解するための単語力や文法のストックが十分増えた状態になります。ただ、これをいざ自分が実践で使うとなると、相手の会話内容を聞き取るだけでなく、自分の知っている英文や単語をすぐにつなぎ合わせ、文章にして相手に伝えるという練習を積まなければなりません。
こうした「スピーキング」の練習はリスニングの練習である「聞き流し英会話」と合わせて行うことが重要です。総合的な「英会話」の力をつけるために、バランスよくいろいろな勉強法を取り入れていきましょう。